『博士と彼女のセオリー』(原題:The theory of everything)時間、白と黒、境界
『レ・ミゼラブル』(2012)でマリウス役を演じていた、
エディ・レッドメインが主人公スティーヴンを演じる。
―アカデミー賞受賞
主演男優賞(エディ・レッドメイン)
―ゴールデン・グローブ賞受賞
主演男優賞(エディ・レッドメイン),作曲賞
―英国アカデミー賞受賞
英国作品賞,主演男優賞(エディ・レッドメイン),脚色賞
↓『博士と彼女のセオリー』公式HP
♪今回のBGM♪
・スティーヴン・ウィリアム・ホーキング Stephen William Hawking
イギリスの理論物理学者。
・タイトル
"The theory of everything"は、
theory of relativity(相対性理論)にかけている(と思う)
1.TIME/時間
スティーヴンは「時間」について論文や本を書きます。
映像にはそれを意識したセットやシーンがたくさん。
・時計回りと反時計回り
-冒頭の車椅子:反時計回り
-自転車の車輪:時計回り
-コーヒーに入れたミルク:反時計回り→時計回り
-メリーゴーランド:時計回り
-庭でスティーヴンとジェーン:反時計回り
・時計
時計も至るところに移りこんでいます。
-家でジェーン父がジェーンに、結婚に関して忠告をする場面(父の背後)
-ジェーンがスティーヴンに腕時計をはめてあげる場面
・数字
スティーヴンが立つとき(3,2,1…、2,3…)や子供が遊んでいるとき(17,18…)など、数を数える場面が頻繁に出てきます。
また、スティーヴンがクリケットから寮部屋に帰る時の壁(7)や、子供を産んだときのビデオカメラに写るドア(6、5)にも数字があります。
♪BGM2♪
2.スティーヴンとジェーン/白と黒
-対極な二人のプロフィール
*スティーヴン
理系
語学:英語
崇めるもの:「全て」を証明する単一の方程式
*ジェーン
文系
語学:フランス語,スペイン語
崇めるもの:「全て」の創造主である神
-白と黒
light and dark.
ジェーンのお父さんが、白身魚か赤身魚どっちにする?と聞いた時の言葉です。
スティーヴンの寮部屋に置いてあり、何度も映りこむチェス。
チェスは白と黒ですよね。
3.everything=博士と彼女
邦題『博士と彼女のセオリー』に対し、
原題は"The theory of everything"
everything(「全て」)=博士と彼女
・ビッグバンからブラックホール
スティーヴンとジェーンのパーティーのシーンでは、こんな説明があります。
<ブラックライトで白いところが光って見えるのは、洗剤に含まれる蛍光物質が紫外線を吸収し、波長を出す。
また、星の誕生と終わりには、紫外線を放出する。
よって、もし夜の空が蛍光物質でできていたら月や星の瞬きは見えないが、星の誕生と終わりだけ見える。>
・人間の努力の限界や境界
時空の特異点が爆発することで時が始まる。
また、
しかし、人間の努力に限界や境界があってはならないと最後に言っています。
・これらを踏まえて…
映画での、主人公スティーヴンと(元)妻ジェーンの関係は、巡り会うところから始まるのですが、
映画の最後に、それがスティーヴンとジェーンの子供が走っている場面から、全て逆再生で流れます。
序盤のパーティーのシーンでは花火が上がっていたのですが、逆再生シーンにもバッチリ映っています。
そこで…
-解釈1
中盤で、コーヒーに入れたミルクが反時計回りから時計回りになり、フッと消えてしまうシーンがありますが、
逆再生シーンがこれに準ずるものだとすると、
映画の最初の花火="博士と彼女"(全て)の始まり(=ビッグバン)
逆再生シーンで流れた最後の花火="消滅"の爆発
スティーヴンとジェーンが共に歩む歴史が終わり、それぞれ別の道を歩くための"消滅"だった。
-解釈2
逆再生シーンは回想というだけで、
改めて、最初の花火で"博士と彼女"(全て)が始まったことを強調した。
"消滅"を意味する(花火のような)爆発はなく、
人間が作り上げる愛は子供に受け継がれ、消滅や限界がない。
私は解釈2が好みです。